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千葉の近現代史を創った男「櫻井俊雄」の 世相を斬る

2024-04-04
カテゴリ:政治,コラム,連載,行政
「まずは自助」
作 武田弥太郎

今年の幕開けは、能登半島を襲った大地震からはじまった。崩壊した建物、夕闇の中炎上する街並み、港を襲う津波などの映像が報道され、「見る側」の人々は、死者数や崩壊した建物の数などの数値で被害状況を判断する傾向にある。もちろん、それら定量的な数値は被害状況を判断するうえで重要な尺度だ。しかし「被災した側」からすれば、それら数値と同様に深刻なのは「変わってしまった生活の在り様」という極めて定性的な状況変化だ、と俊雄は言う。

地震調査研究推進本部地震調査委員会の長期評価によると、マグニチュード8~9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は70~80%とされている。その際、千葉県では最大で11mの津波や、震度5強の揺れが想定されている。千葉市を襲う津波は最大でも2・9m。わが市の総延長42kmにおよぶ海岸線は、津波被害からも無縁ではいられない。
そのとき、私たちの生活はどのように「変わってしまう」のか、またできる限り安全で平穏な生活を続けることができる備えや心構えとはどのようなものなのか、傾向と対策を日ごろから考えておくことが重要だ。課題は多々あるなか、その一つは昨年の稲毛新聞9月号で報じたように「行政がなんとかしてくれる」と甘い考えでいる市民があまりに多いことである。

強い言い方になってしまうが、発災直後のおよそ48時間、行政はほとんど何もしてくれないと覚悟しておいたほうがよいだろう。発災後の約2日間、自分や家族の生活を守るのは、他ならぬ自身の判断と平時の備えであることを、まず心に留めておく必要がある。石川・能登地方の大地震の2日後、1月3日午前に開かれた石川県災害対策本部会議で「初めて支援物資が届いたが、約1万人の避難者に対して物資は約2千食しかない」と輪島市の坂口市長が報告していた。このようなことはどの場所でも起こりうる。
発災時、避難所の開設や緊急の炊き出しは行政がしてくれるわけではない。避難所の開設運営や炊き出しを行うのは地域住民だ。避難所ごとに行政の担当者が数名はアサインされてはいるが、公務員とて被災者だ。市職員が必ず避難所に来ることができる保証はどこにもない。また食料も最低限しか保管されていないため、避難所によっては被災者が持参した食料や水が生命線になることもある。

他方、平時である今こそ、正しく行政に求めておくことが重要であると俊雄は訴える。行政ができることは先の通り限定的だが、基礎自治体の最大の役割は「市民の命を守ること」。その点では、地域住民で組織する自主防災組織や避難所運営委員会と行政との定期的な連絡体制の確保があげられる。
日ごろから発災を前提とした会合を開き、実効性のある訓練を行政と同組織とで連携・実施を求めることは、地域の安全を守るうえで非常に重要だ。また、避難行動要支援者の個別計画の策定率をあげることや、要支援者の方々を発災時に支援する市民や事業者の確保を急ぐことも行政の役割だ。

いずれにしても、まずは自助、共助があったうえで、行政にしかできない公助を求めることが、平時の私たち市民の正しい思考方法だと俊雄は考えている。


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