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《連載》日本の近現代史を創った男「櫻井俊雄」の世相を斬る【2024年11月号2面】
2024-11-01
カテゴリ:政治,コラム
「解散総選挙と石破政権の多難な船出」 作/武田弥太郎
衆議院議員選挙の総括
衆議院議員選挙が終わった。
自民党と公明党とで過半数割れとなることは、選挙後半では多くのメディアで予想していた。ただ、今回のように自民党が大敗することは想定外だった。その原因は、選挙戦の最中にしんぶん赤旗がすっぱ抜いた、「公認の有無にかかわらない2千万円支給」問題が大きかったことは間違いないだろう、と俊雄は振り返った。
自民党執行部にも言い分はあるだろうが、選挙について百戦錬磨の彼らがなんというセンスのないことをしたものか、と驚くばかりだ。それにしても、このような情報がたやすく外部に漏れてしまう自民党の体制についても心配になる事案だった。
またこの事案を一歩引いたところから眺めると、日本国民はいわゆる「政治に対する納得感」を強く求めていることがうかがわれる選挙であったともいえるのではないか。例えば、少子高齢化の加速により何らかの増税があった場合でも、「金に汚い政治家に決定されたくない」という意識が、今回の選挙に反映されたのだろう、と俊雄は分析した。
もう一つ、今回の選挙で印象深かったのは、選挙の顔となる各政党の党首のカラーがこれまで以上に選挙に強い影響を与えている、という点だ。例えば、かつての自民党は誰が党首に選ばれても、自民党という看板だけである程度十分な票を獲得することができた。もちろん、あまりに酷い金権問題発覚直後の選挙で、これまで自民党に親和的であった浮動票が大量に離反した、などのイレギュラーな事例はあった。しかし、いわゆる「普通の選挙」では、国民に名前が知られていない党首であっても過半数をとるだけの底力が、自民党にはあったと俊雄は総括した。
一方、インターネット社会の伸張により、選挙に関心のある国民が多くの情報に触れ、自らも評論家のように情報発信することができる現代、党首の「政治家としての実績やイメージ」が色濃く選挙に影響するようになったと俊雄は感じている。この事象一点で考えるならば、情報化社会の浸透の「好ましい側面」だという。
自民党の党首が、石破議員と決選投票で惜敗した高市議員だったらどうだったか? 選挙結果は「先鋭的保守クラスター」の票は伸ばしたものの「リベラル寄りの保守クラスター」の票は減らしたはずで、その結果は大きく変わっていただろう。そして同様に、立民の党首が野田議員ではなく枝野議員だったら、維新の党首が馬場議員ではなく、吉村知事の単独代表だったら、という「党首と選挙」という軸で考えることは、これまで以上に重要になるはずだと俊雄は語った。
石破政権の今後
いずれにしても、今回の選挙は与党が過半数を大きく割り込んだ。今後、石破政権が来るべき参議院選挙までに乗り越えなければならない喫緊の試練は、政治と金の問題に関する対処と連立の方向性の確定だと俊雄はいう。今回の選挙でもわかる通り、政治と金の問題は自民党が抱える最大の爆弾であり、対応一つで参議院選挙でも大敗する可能性を秘めている。そんな状況下で、過半数を割り込んだ連立の体制をどうするか、まとめ上げなければならない。今自民党と連立を組むことはどの党にとっても得策ではないから、非常に難しい交渉を、石破内閣に強いることになるだろう。国会運営についても、これまでのような力で押し通す手法は不可能になった。そうなると、個別政策ごとに野党と協力関係を構築しながら、慎重に国会運営をしなければならない。さらに、今後は経済運営、アメリカの新大統領との外交開始等、難しい政治課題が山積みだ。
心ある国民は安定的な政治を望んでもいる。俊雄もその一人だ。石破政権は多難な船出となったが、彼のリーダーシップに期待するしかない。
衆議院議員選挙が終わった。
自民党と公明党とで過半数割れとなることは、選挙後半では多くのメディアで予想していた。ただ、今回のように自民党が大敗することは想定外だった。その原因は、選挙戦の最中にしんぶん赤旗がすっぱ抜いた、「公認の有無にかかわらない2千万円支給」問題が大きかったことは間違いないだろう、と俊雄は振り返った。
自民党執行部にも言い分はあるだろうが、選挙について百戦錬磨の彼らがなんというセンスのないことをしたものか、と驚くばかりだ。それにしても、このような情報がたやすく外部に漏れてしまう自民党の体制についても心配になる事案だった。
またこの事案を一歩引いたところから眺めると、日本国民はいわゆる「政治に対する納得感」を強く求めていることがうかがわれる選挙であったともいえるのではないか。例えば、少子高齢化の加速により何らかの増税があった場合でも、「金に汚い政治家に決定されたくない」という意識が、今回の選挙に反映されたのだろう、と俊雄は分析した。
もう一つ、今回の選挙で印象深かったのは、選挙の顔となる各政党の党首のカラーがこれまで以上に選挙に強い影響を与えている、という点だ。例えば、かつての自民党は誰が党首に選ばれても、自民党という看板だけである程度十分な票を獲得することができた。もちろん、あまりに酷い金権問題発覚直後の選挙で、これまで自民党に親和的であった浮動票が大量に離反した、などのイレギュラーな事例はあった。しかし、いわゆる「普通の選挙」では、国民に名前が知られていない党首であっても過半数をとるだけの底力が、自民党にはあったと俊雄は総括した。
一方、インターネット社会の伸張により、選挙に関心のある国民が多くの情報に触れ、自らも評論家のように情報発信することができる現代、党首の「政治家としての実績やイメージ」が色濃く選挙に影響するようになったと俊雄は感じている。この事象一点で考えるならば、情報化社会の浸透の「好ましい側面」だという。
自民党の党首が、石破議員と決選投票で惜敗した高市議員だったらどうだったか? 選挙結果は「先鋭的保守クラスター」の票は伸ばしたものの「リベラル寄りの保守クラスター」の票は減らしたはずで、その結果は大きく変わっていただろう。そして同様に、立民の党首が野田議員ではなく枝野議員だったら、維新の党首が馬場議員ではなく、吉村知事の単独代表だったら、という「党首と選挙」という軸で考えることは、これまで以上に重要になるはずだと俊雄は語った。
石破政権の今後
いずれにしても、今回の選挙は与党が過半数を大きく割り込んだ。今後、石破政権が来るべき参議院選挙までに乗り越えなければならない喫緊の試練は、政治と金の問題に関する対処と連立の方向性の確定だと俊雄はいう。今回の選挙でもわかる通り、政治と金の問題は自民党が抱える最大の爆弾であり、対応一つで参議院選挙でも大敗する可能性を秘めている。そんな状況下で、過半数を割り込んだ連立の体制をどうするか、まとめ上げなければならない。今自民党と連立を組むことはどの党にとっても得策ではないから、非常に難しい交渉を、石破内閣に強いることになるだろう。国会運営についても、これまでのような力で押し通す手法は不可能になった。そうなると、個別政策ごとに野党と協力関係を構築しながら、慎重に国会運営をしなければならない。さらに、今後は経済運営、アメリカの新大統領との外交開始等、難しい政治課題が山積みだ。
心ある国民は安定的な政治を望んでもいる。俊雄もその一人だ。石破政権は多難な船出となったが、彼のリーダーシップに期待するしかない。