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[随筆]吉成庸子物語 【2025年9月号2面】
2025-09-04
カテゴリ:コラム,連載
好評
儀ちゃんは私の心の中に住んでいます 後編
儀ちゃんは農家の息子、両親は毎日田畑で働いて儀ちゃんを育てた。末っ子だから随分可愛がられたそうだ。
戦争がはじまると彼は志願し特攻隊に入った。霞ヶ浦で厳しい訓練の日々を送っていたが、飛び立つ前に日本が戦争に負けた。命を日本国に捧げる覚悟だったから、終戦後一年ほどは何も手につかず、隣村の青年達とケンカするような荒れた毎日だったそうだ。
そのうちに儀ちゃんはこのままではいけないと考え、近所に住む学校の先生の助言もあって両親に「大学へ行きたい」と話をした。両親は経済的に厳しい状況だったが快く大学へ送ってくれた。
二年間の専門部を卒業し両親の許へ帰った儀ちゃんは、笹川中学校の先生になった。しかしもっと勉強したいという思いから、再び学生に戻り、同時に学校の事務のアルバイトにも励んだ。無理をして学校に通わせてくれた両親に感謝し、その気持ちに応えなければと一生懸命に勉学に励み通信簿は全優だったそうだ。
卒業後、儀ちゃんは銀行員になり、ただひたすら働いた。仕事が終わり、いったん帰宅してから、また自転車に乗って預金のお願いに走り回ったという。
儀ちゃんは結婚早々、二人の娘にも恵まれた。娘の成長とともに楽しくよい家庭となり、儀ちゃんの役職もだんだん上がっていった。その後、奥さんが病気でお亡くなりになった。
七年の月日が流れ当時、東京で七つの店を経営していた私は、突然儀ちゃんからプロポーズされた。私の父も儀ちゃんと同じ銚子商業卒だから、儀ちゃんにはよくしてもらってはいたが、年齢も大分離れているし結婚相手としては全然考えたこともなかった。
そのころの私は心細さを感じていた。なぜなら、仕事をする上の資金繰りに頼っていた父が前年に亡くなっていたからだ。そして母から「頼むからこの辺で仕事をやめて身をかためておくれ」と懇願され、儀ちゃんとの結婚を承諾した。
銚子商業の卒業生で成功者と言われていた方がいろんな銀行からお金を借りた上、計画倒産した。人のよい私の父は、その人が京葉銀行からお金を借りる際に、連帯保証人になり山一つ担保に入れていたので、その山は銀行に強制的に処分されてしまった。
このことがあったので、儀ちゃんは「山をとった上、娘までとってしまい、庸子のお父さんのお墓には恐くて行かれない」と真顔で言っていた。
戦争がはじまると彼は志願し特攻隊に入った。霞ヶ浦で厳しい訓練の日々を送っていたが、飛び立つ前に日本が戦争に負けた。命を日本国に捧げる覚悟だったから、終戦後一年ほどは何も手につかず、隣村の青年達とケンカするような荒れた毎日だったそうだ。
そのうちに儀ちゃんはこのままではいけないと考え、近所に住む学校の先生の助言もあって両親に「大学へ行きたい」と話をした。両親は経済的に厳しい状況だったが快く大学へ送ってくれた。
二年間の専門部を卒業し両親の許へ帰った儀ちゃんは、笹川中学校の先生になった。しかしもっと勉強したいという思いから、再び学生に戻り、同時に学校の事務のアルバイトにも励んだ。無理をして学校に通わせてくれた両親に感謝し、その気持ちに応えなければと一生懸命に勉学に励み通信簿は全優だったそうだ。
卒業後、儀ちゃんは銀行員になり、ただひたすら働いた。仕事が終わり、いったん帰宅してから、また自転車に乗って預金のお願いに走り回ったという。
儀ちゃんは結婚早々、二人の娘にも恵まれた。娘の成長とともに楽しくよい家庭となり、儀ちゃんの役職もだんだん上がっていった。その後、奥さんが病気でお亡くなりになった。
七年の月日が流れ当時、東京で七つの店を経営していた私は、突然儀ちゃんからプロポーズされた。私の父も儀ちゃんと同じ銚子商業卒だから、儀ちゃんにはよくしてもらってはいたが、年齢も大分離れているし結婚相手としては全然考えたこともなかった。
そのころの私は心細さを感じていた。なぜなら、仕事をする上の資金繰りに頼っていた父が前年に亡くなっていたからだ。そして母から「頼むからこの辺で仕事をやめて身をかためておくれ」と懇願され、儀ちゃんとの結婚を承諾した。
銚子商業の卒業生で成功者と言われていた方がいろんな銀行からお金を借りた上、計画倒産した。人のよい私の父は、その人が京葉銀行からお金を借りる際に、連帯保証人になり山一つ担保に入れていたので、その山は銀行に強制的に処分されてしまった。
このことがあったので、儀ちゃんは「山をとった上、娘までとってしまい、庸子のお父さんのお墓には恐くて行かれない」と真顔で言っていた。
儀ちゃんは「こんな女房をもらった俺は日本一の不幸ものだ」となげいていたけど、私は結構楽しい夫婦だったと思っている。お盆が近づいているからお墓参りに行こうかと思ったが、やっぱり行かないことにした。儀ちゃんが大好きだった桔梗の花を買ってきて、儀ちゃんの机の上に置いた。



